今冬のインフルエンザ対策

はじめに  

 ここ 数年前から、画期的な迅速診断法の普及、そして特効薬の保険適応、インフルエンザワクチンの公費実施などインフルエンザの診断、治療、予防の進歩にめざましいものがあります。
 
私たち日本臨床内科医会では、これらについて
毎年全国調査研究を行い、その成績を国民のインフルエンザ対策に役立てています。  今回、そのデータを基に、最新情報をお伝えいたします。

1.インフルエンザとは         2.インフルエンザの症状   
3.インフルエンザの診断方法  4.インフルエンザの治療  
5.ウイルス排泄と家族内感染  6.インフルエンザの予防  
7.家庭におけるインフルエンザ対策                             
                            

1.インフルエンザとは

 

インフルエンザという語源は、1358年にイタリア人によって星、もしくは寒い気候による影響と言われたのが最初で、病原菌が天から降ってくると考えられていました。
 
インフルエンザウイルスは元々鴨など鳥類の腸内ウイルスが起源であり、感染したアヒルやニワトリなどの家禽から、通常ブタを介して人に感染致します。感染力が大変強く、飛沫感染により潜伏期間12日を経て発病、低温・低湿度の冬季に大流行いたします。
は過去6ヶ年の流行時期を示しています。

 20世紀の四大流行といわれるものに、19181919 スペインかぜ、19571958 アジアかぜ、19681969 香港かぜ、19771978のソ連かぜがあり、このうち、スペイン風邪は、6億の人が罹り、2300万人が死亡、わが国でも人口の半数近くが罹り、38万人が亡くなりました。人々が免疫を持たない新型インフルエンザが発生すると、このように一大脅威となります。

 
インフルエンザには、ウイルス表面突起の抗原性の
違いによるA型、B型、C型があります。
C
型は、稀に小児期に重症化することがありますが、成人では症状が軽く、いずれ
もあまり問題になりません。 は年齢別の罹患状況で、インフルエンザ(特にB型)は、若年者に多いことがわかります。

2.インフルエンザの症状

 突然の発症、38度以上の発熱、上気道炎症状、全身症状(筋肉痛、全身倦怠など)以上四項目全てを満たすこと(厚労省の感染症発生動向調査による症状診断基準)となっていますが、のように年齢とともに最高体温は下がり、老人の場合、発熱は37℃台のことも多く、必ずしも症状はこの基準どおりではありません。

3.インフルエンザの診断方法

迅速診断キット
2
002年画期的検査方法が開発されました。
それは、外来で、15分以内に簡単にできる迅速診断法で、インフルエンザかどうか、同時にA型かB型かが診断可能です。
 
ただ、この検査方法は、発病初日は確率が60%と悪く、陽性に出ない場合があり、ウイルス排泄の多い2日目80%、3日目84%と高くなります。

そのため、発病当初は、迅速キット陰性でもインフルエンザが疑われる場合、翌日にもう一度やってみる必要があります。 
   
 
なお、流行の最中には先述の臨床症状による診断も確率が高く、1)突然の発症2)38以上の発熱3)上気道炎症状4)全身症状(筋肉痛、全身けん怠感)、以上すべてが揃った場合、早期治療のため特効薬を初日に内服したほうが、早く治ります。

 

4.インフルエンザの治療

抗インフルエンザ薬
オセルタミビル(タミフル・内服)、ザナ
ミビル(リレンザ・吸入)、アマンタジン(シンメトレル・内服)が保険適応となっています。 
A型ではオセルタミビルやザナミビルを内服後30時間ぐらいで解熱しますが、図4のようにB型の場合にはオセルタミビルよりザナミビルの方が良く効きますこれらは遅くても2448時間内に内服することになっています。なお、アマンタジンはここ2年間でインフルエンザウイルスの耐性化がみられ、あまり効果がなくなりました。
 
また、ウイルスは抗インフルエンザ薬を内服すると、より早く消失しますが
、解熱してもまだ排泄されていますので 、家族への感染、職場での感染を防ぐため、あるいは気管支炎などを長引かせないためにも、規定どおり合計5日間は服することが必要です。

 

インフルエンザと異常行動
 
10歳以上の未成年の患者においては、因果関係は不明であるものの、オセルタミビル製剤の服用後に異常行動を発現し、転落等の事故に至った例が報告されました。このため、この年代の患者には、合併症、既往歴等からハイリスク患者と判断される場合を除いては、2007年から原則として本剤の使用を差し控えることになりました。                         また、異常行動はインフルエンザそのものの症状とも考えられるため、小児・未成年者については、万が一の事故を防止するための予防的な対応として、インフルエンザにかかった場合には、少なくとも2日間小児・未成年者が一人にならないよう保護者等配慮することになりました。

5.ウイルス排泄と家族内感染

調査によると、解熱後もウイルスが排泄されていて、抗ウイルス薬を止めた後も排泄されていました。そのため、抗ウイルス薬は、解熱後も家庭や職場での感染防止上、また気管支炎など病状を長引かせないためにも、計5日間の内服が必要です。
なお、家族内感染は、子供が主要な感染源であり、ついで母親が感染源となっていました

6.インフルエンザの予防

ワクチンの効果
 
インフルエンザワクチンは、世界的に広く用いられ、通常不活化された抗原(ウイルス)が用いられますが、ワクチンの抗原と、流行株の変異からくる抗原性のずれが発生し、必ずしも万全ではありません。そのため、わが国では1994年から、インフルエンザの社会的流行に対する抑止効果が薄いと判断され、児童の公的接種が廃止されました。
 
しかしながら、老人のインフルエンザ罹患による肺炎などの死亡率が高いため、2001年から65歳以上の公的接種が開始されました。予防接種を行うことにより、インフルエンザに罹りにくくし、罹っても肺炎など重症化を防ぐことを期待しての措置です。

 
ワクチンの効果は絶対ではありません。 2005年から2006年にかけて、ワクチンを接種しない人のインフルエンザ罹患率は7%で、接種した人では3%でした。このうち15歳未満では非接種者の罹患率は18%、接種者では11%でした。ワクチンは65年前はよく効いていましたが、43年前と効果が落ち、一昨年は少し持ち直しています
。 つまり現在使われているワクチンには予防効果はあるのですが、それでも罹る場合があるので過信は禁物です。
 
なお、基礎免疫の少ない13未満では原則2回接種が勧められています。65歳以上は1回接種でもよいようです

ワクチン接種の副反応
ワクチン接種者の30%ぐらいに注射部位の反応が出るといわれていますが、一昨季の調査では、被接種者接種8816名中、臨床上問題となった副反応は128名にみられ、出現頻度は1.45%でした。多かったのは、やはり局所症状としての発赤55名、疼痛28名、腫張24名、かゆみ19名であり、全身症状は発熱12名、倦怠感9名と比較的少なく、ワクチンの安全性は高いといえます。

 

家庭におけるインフルエンザ対策

  • 早期受診
    早期に特効薬を内服することより、いち早く治すことが可能。
  • 安静
    仕事、宴会、夜更かしなど無理をしないで安静が一番です。
  • 部屋の保温(22以上)と湿度60%以上の管理
    ウイルスは低温、低湿を好み、乾燥でのどや気道粘膜を傷めないように部屋の湿度を保つ工夫(濡れタオル、植木鉢)をしましょう。
  • 水分、ミネラル、ビタミンの補給
    脱水を防ぎ、脳症、肺炎など重症化を防ぐために充分に補給しましょう。
  • 家庭内・職場内感染を防止
    飛沫感染を防ぐため、インフルエンザにかかった人はマスクなどをして、くしゃみや咳でほかの人にうつらないように注意して下さい。
     

(日本臨床内科医会インフルエンザ研究班 )


 

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       厚生労働省平成20年度「今冬のインフルエンザ総合対策について」